南国の太陽を浴びて甘く育った1つの果実が、政治の波に翻弄され、そして日本人として胸に響く連帯のメッセージになった。台湾のパイナップルと農家たちの物語を、私たちは決して他人事として見過ごせない。
① 突然の禁止宣言
2021年2月、台湾から中国本土へのパイナップル輸出が、突如として停止されました。中国側は「スケールインセクト(ハダニ類)などの害虫混入」の疑いを理由に挙げました。
しかし背景には、台湾と中国の間の政治的緊張、そして台湾の果樹農家が大きく中国市場に依存していたという構図が横たわっていました。
② 農家が直面した“依存の代償”
かつて台湾産パイナップルの約9割が中国向けだったと言われます。
その“安心”の裏側にあったのは、一国の政策で事業が一夜にして揺らぐ可能性でした。農地に夕陽が沈む頃、 farmers は「明日どうなるのだろう」と祈るように果実を見つめたのです。
③ 「自由パイナップル」へ
台湾政府や農家・市民はこの苦境を受け止めると同時に、「自由パイナップル(Freedom Pineapple)」という呼びかけを生み出しました。台湾国内での消費促進、そして日本・豪州・中東といった新たな輸出先に視線が向けられました。
日本のスーパーでは「台湾パイン支援!」のポップまで掲げられ、多くの日本人が果実を手にしたという報告もあります。
その光景を思うと、「農家を支える」という言葉が、遠く離れた島国と島国を結ぶ確かな行動になったことに胸が熱くなります。
④ 日本人としての覚悟と連帯
私たち日本人は、台湾のこの一例から、いくつかのことを学べます。
信頼できる市場を作ることの大切さ。 農家・産業・生活者がひとつの果実=パイナップルを通じて守られる瞬間の尊さ。 経済が“ただの数字”ではなく、人の暮らし・希望・誇りと直結していること。
台湾の田んぼに広がるパイナップル畑を想像してみてください。風に揺れる濃緑の葉の間から、ポツンと黄金色の果実が覗きます。そしてそれを「応援しよう」と手を差し伸べたのは、日本という隣の島の人々だったのです。
⑤ 今、私たちにできること
読み終わった後、もし手元に台湾パイナップルがあれば、ぜひ味わってみてください。そして、少しだけその果実に“台湾からのメッセージ”が籠っていることを思い出してほしい。
それが、遠く離れた島で起こった出来事と自分が“つながった”瞬間だからです。
おわりに
果実の色、匂い、甘み――それは数値に還元できない価値です。
台湾のパイナップルを通じて見えた、経済の脆さと人の連帯。
そして私たち日本人として「隣人として共にある」という覚悟。
果実が伝えた物語に、心が震えるなら、それはきっと“本物”のニュースです。
出典(参照)
“Prickly problem: Taiwan says won’t be beaten by China pineapple ban”, Reuters, March 3 2021. “The Sugar-Coated Poison of the Chinese Market: How Will Taiwanese Pineapples Fight Against Their Fate?”, The Reporter English Edition, February 28 2021. “China’s pineapple ban exposes Taiwan’s vulnerability”, East Asia Forum, April 24 2021. “How China uses fruit to punish Taiwan”, Vox, April 1 2022. “China Slaps Export Bans on Taiwanese Goods – Again”, The Diplomat, December 16 2022.